アニメ「黒執事」(くろしつじ)は、枢やなの漫画作品『黒執事』が原作。
1期は2008年10月より放映され、2期となる「黒執事II」は2010年に放映された。
こんな方におススメ
おススメ度:★★☆☆☆
黒執事や、耽美な世界感が好きな方。ラストが賛否両論なので、ごり押しはできない。
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ここからネタバレ!
「黒執事Ⅱ」は「黒執事」の続編なのか
はじめに「黒執事」のおさらいから。
舞台は19世紀イギリス。若き実業家シエル・ファントムハイヴ伯爵(12歳)の傍らには、いつも完璧な執事がいた。
執事の名は、セバスチャン・ミカエリス。その正体は悪魔。
幼い頃、シエルは両親を殺され、自身も誘拐され尊厳を踏みにじられた過去がある。その犯人を見つけ復讐をとげるため、自らの魂と引き換えに契約を交わした悪魔がセバスチャンだ。
アニメ1期となる「黒執事」で復讐は成し遂げられ、契約どおりシエルがセバスチャンに魂を差し出したことで、物語は終わったと思われた。
だが、「黒執事Ⅱ」では、てっきり死んだと思われたシエルが登場したことから1期とは無縁かと思いきや、しっかりとつながっている。1期のラストで何があったのかについても作中で明かされるが、要はセバスチャンはシエルの魂を食せなかったのだ。
ただ、つながりがあるとはいえ、黒執事Ⅱのラストについては納得できない部分も多く、なかなか受け入れがたいところがあるのは否めない。
黒執事Ⅱは黒執事の続編という位置づけではあるが、一種のパラレルとして捉えておくと気持ちが楽かもしれない。
「黒執事Ⅱ」あらすじ
黒執事Ⅱでは、シエル&セバスチャンの敵として、アロイス・トランシー&クロード・フォースタスが登場する。
アロイスは伯爵、クロードはアロイスの執事であり、アロイスと契約した悪魔。
つまり、シエル&セバスチャンと同じ関係性をもつふたりである。
策略によりシエルとアロイスは互いを憎み合い、それぞれの執事も対立し、闘うことになる。
まさに黒執事 VS 黒執事。
この対決、クラシック音楽にのせて優雅に舞うようなアクションがあるかと思えば、おやつ対決もあったりと、なかなかおもしろくて見ごたえがある。
また、適度にユーモアがあるのも本作のいいところ。
黒執事Ⅱは決して明るい話ではないのだが、死神グレル・サトクリフやドルイット伯爵が良い感じに場を盛り上げてくれた。
エロスな雰囲気をまとう世界観
「黒執事Ⅱ」の魅力はずばりエロスではないかと思ってしまうくらい、全体をとおしてエロスな雰囲気が付きまとっている。(注:エロではありません。)
まずは、アロイスの使用人・ハンナ。
彼女の体は剣をおさめる鞘となっていて、クロードが彼女の口に手をつっこんで取り出すのだが、これがまあ色っぽい。苦しそうに涙ぐむハンナに対し、クロードが無表情なところもよい。
そして、セバスチャンとクロード。
ふたりの絡みのシーンもさることながら、何より13歳の少年シエルをめぐって大のおとな(悪魔)が争うっていうのがなんとも。
セバスチャンは「『私の』坊ちゃん」をめちゃくちゃアピールしてるし、クロードはセシルの足に口づけて蹴られてるし(しかもうれしそう)。
これは腐女子向けのサービスですか!?と思わずにはいられなかった(汗)。
アロイス・トランシーの悲哀
アロイスはしょっぱなから使用人ハンナの目をつぶすなど、他人を蔑み踏みつける残酷でワガママな少年だ。(厳密にはハンナは悪魔だが)
第一話から嫌なヤツ全開で、人間からは嫌われるタイプだった。
けれど、彼の過去が明かされ、彼をそんなふうにしてしまったのも人間であったことがわかってくる。
この世を憎み復讐にとらわれるアロイスなのに、誰よりも寂しく孤独で愛を求めているのもアロイスで、その狭間で苦しんでいたのだと思うと切ない。
アロイスは伯爵となり、悪魔であるクロードと契約を交わし、強者になったつもりでいたのだろう。だけど、それは間違いで、彼は弱いままだった。
だからこそ彼は、執事であるクロードに痛々しいまでの愛を求めてしまう。悪魔に愛を求めることの不毛さにも気づかずに。
一方、なによりも己の誇りを重んじるシエルはと言えば、セバスチャンは所詮悪魔だと割り切って利用しているし、信用もしていない(苦笑)。
何より、愛を乞わなくても、自らの足で立ち続ける強さをもっているのだ。
シエルとアロイス。ふたりが対決する形となった本作で浮き彫りになったのはアロイスの弱さだったが、決して彼が特別弱いわけでなく、より人間らしかっただけだと思う。
アロイスにも温かな愛情や食事がありさえすれば、悪魔にいいように扱われることもなかっただろう。
シエルとアロイスの対比はOPにも
黒執事Ⅱのオープニング(OP)がかっこよくて好きだ。
ふだん、アニメのOPは早送りするのだが、毎回見入っていた。
実は、シエルとアロイスの対比については、じつはこのOPに如実に表現されている。
アロイスはクロードの手に捕らわれ、その身をゆだねる。
シエルはセバスチャンの手を払いのけ、顎で「ついてこい」と命ずる。(そしてセバスチャンは苦笑を浮かべる。)
ふたりとも自らの魂と引き換えに悪魔と契約を交わし、その悪魔を執事としてそばにおいているわけだが、その関係性についてはまったく違うものであるということが見てとれるのだ。